UP-DATE:2019.03.01(Fri.)

  ●ラギの企画原案書です。
    原案書ではありますが、そのボリュームは尋常ではなく、全てをコピーするとコピー用紙の約3/4を消費する、
    通称『電話帳』と呼ばれるぶ厚さでした。
    それを仕事の合間に、1ヶ月に1回の企画会議に向けて作ったのですから、常軌を逸しています(w)。

    『ラギ』の名称ですが、前の企画が『スーパーチャンピオンベースボール -帰ってきたチャンピオンベースボール-』の
    続編の『スーパーチャンピオンベースボール -帰ってきたチャンピオンベースボール- '90開幕版』(※没タイトル)と、
    余りにも長いタイトルだったので反動が来ました、『次は絶対短くするぞ』みたいな(w)。

    既存の単語だと商標登録が取れにくく、他社と競合する可能性もあるので、架空の惑星の名前にしようと考えました。
    それと、それまでのヒットゲームには、ラ行の文字のどれかが入っている確率が高かったという縁起も担いでいます。

    とにかく枚数が多いので、ここでは抜粋した形でアップします。
   


  ●企画概要のページです。
    当初は8エリアを想定していましたが、これには『スーパーマリオブラザーズ』以下の数字を提示して
    マイナスイメージに受け止められるのは避けたいという思惑と、それ以上のエリアは容量と制作時間的に
    厳しいだろうという計算がありました。
   
   

  ●ストーリーの紹介ページです。
    当初、主人公のブルーは葉っぱでは無く、剣を持っているという設定で、ストーリーも最終稿とかなり違います。
    自分の中では、雑魚敵キャラクターを剣を使って"まとめて"なぎ倒しつつ、見た事の無い異世界に展開する
    大仕掛けのアスレチックを乗り越えていくものを想定していました。
   
   

  ●エリアの構成案です。
   
   

  ●各エリアのステージ構成です。
    この企画原案を練っていた時期は、まだNEO-GEOの仕様が固まっていない状態でした。
    そんな中で、アーケードだけではなく、家庭用コンシューマー機としても稼働させるというコンセプトが当初からあり、
    『ラギ』はどちらかというと、家庭用での稼働をメインに据えていました。
   


  ●全体イメージです。
    この原案書は全体的に絵を多くしていますが、これが企画会議の攻略法のひとつだと踏んだ為です。

  ■アルファ電子時代の企画会議の傾向と攻略法
    1・文字をあまり読まない人がいる → 絵なら見て頂ける
    2・上手い絵も下手な絵も見る時間はさほど変わらない → 丁寧な1枚よりも、ラフ画を山ほど見せた方が印象に残る
    3・会社の営業力が皆無 → 他社に販売して頂くので、市場で被る可能性が低い天邪鬼的な企画の方が通りやすい
    4・社長の発案の企画は誰もやりたがらないが通りやすい → これを利用しない手は無い
    5・他人の企画に興味が薄い人がいる → どれだけ桁違いのインパクトとやる気を感じさせられるかが勝負

    特に4項は強力でした。
    なので、社長が各企画部員に突っぱねられ続けた企画『だるま王国の冒険』が自分に回って来た時、
    他の人たちは『ご愁傷様』モードで見ていましたが(w)、自分は逆にこれをチャンスだと考えました。
    自分がやりたい企画の中のどこかに『ダルマ』というファッション性を使えば、企画会議のアドバンテージが取れると踏み、
    ダルマを敵として割り当てました。

    かくして、昆虫人間(インセクタリアン)の少年ヒーローがダルマと戦うという唯一無二のゲームが生まれました。

   

  ●アイテム案・1です。
    この時点では『葉っぱ』は単なるアイテムの1つでした。
    実は『ラギ』の1つ前の企画会議で、自分はコロボックルを題材にしたアクションゲームを企画していたのですが、
    残念ながら没となり、その仇討ち的に『蕗の葉』をアイテムとして潜り込ませました。
    蕗の葉はサイドビューだと葉っぱに見えなかったので、ここでは里芋の葉に近い形にデザインしてあります。
   
   

  ●アイテム案・2です。
    『ぜんまい』は車などのブリキの玩具に付いているゼンマイと引っ掛けたものです。
    この時点では『キャベツ』は1UPアイテムでした。出典は欧米の赤ちゃんはキャベツから生まれるという話から。
    後にこのアイテムは、画面内の敵をフラワーに変えるという仕様に変えましたが、これは『ファンタジーゾーン』の
    スマートボムからヒントを得たものです。キャベツを食べるとスマートになる、というこじ付けですね(w)。
   
   

  ●アイテム案・3です。
    店で買える商品です。
    『スパイク』のデザインモチーフはロムです。
    『金庫』のアイディアは、SNKのシューティングゲーム『ASO』の『K』パネルがヒントになっています。
   
   

  ●アスレチック案・1です。
   
   

  ●アスレチック案・2です。
    『つりがねひょうたん』は密林地帯ジャモの1面に生き残っています。
    思惑ではファミコンソフトの『グーニーズ』の上からドスンと来る石のトラップのような動きにしたかったのですが、
    あまり上手く行きませんでしたね。
   
    『カメレオン草』はリデザインされ『ペロリン草(ラギ学名:スルマトラプス・プラトマルス)』として生き残りました。
   
   

  ●アスレチック案・3です。
    『氷の地面』は不思議空間に使いましたが、個人的にこのアスレチックは本当に苦手で、デバッグの時以外は
    機械都市バキーンに行きがちでしたね(w)。
   
   

  ●アスレチック案・4です。
    機械都市バキーンの『歯車』は、当初NEO-GEOには回転機能が搭載される予定だったのですが、
    コスト面からオミットされたので、当初とは違う形にリデザインされる事になりました。
    『ベルトコンベア』のアスレチックは、個人的にはプレイしていてすごく楽しいと思っています。
   
   

  ●アスレチック案・5です。
   


  ●アスレチック案・6です。
    砂漠エリアはプレイ時間的な事情から早々に無くなったので、『移動していく蟻地獄』も泣く泣く没にしました。
   
   

  ●アスレチック案・7です。
    『ネトネト・ハウス』のモチーフは『ゴキブリホイホイ』です。
    あまりにもイメージがよろしくないという理由で没になりましたが、個人的には見てみたかったですね(w)。
   
   

  ●アスレチック案・8です。
    『コスモ・カッター』は、この後、ツイン・ダルマックスというキャラクターの武器に特化する形になります。
   
   

  ●アスレチック案・9です。
    『セパレイター』のデザインモチーフは電ノコの刃です。
    ベルトコンベアを通過する障害として登場する他、ダルマ帝王の武器としても使いました。
   
   

  ●アスレチック案・10です。
    『モウセンゴケのぼり』は沼大国シャバーンの樹上ステージにその名残があります。
    当初は1人専用プレイだったのですが、会社的な事情から、ロケテストの1週間前に2人同時プレイにしなければ
    ならなくなり、縦スクロール面は大幅な変更が施される事となり、その際、ただの通路になりました。
   
    『ギッタン橋』もNEO-GEOの回転機能がオミットされたのと同時に地底王国クイラの通路に成り下がりました。
   
   

  ●アスレチック案・11です。
    没になりましたが『サボエ』のデザインモチーフはアロエとサボテンです。
    ラギに登場する植物の多くは、多肉植物のイメージでデザインしています。
   
   

  ●アスレチック案・12です。
    『紙飛行機』は不思議空間で1ヵ所だけ使われています。
   
   

  ●アスレチック案・13です。
    『タコつぼ』は地底王国クイラとダルマ帝国に1ヵ所ずつ、空中土台の吸い込み先として採用しています。

    『パチンコ台』はイメージで描いたものなので、かなり適当です(w)。
    ダルマ帝国内の娯楽施設に潜入する面が、ステージ構成の際、あまり面白くならなかったので没にしました。

    『タンポポの種』につかまるというアイディアは、後年、Playstation2ソフト『xxxHOLiC 四月一日の十六夜草話』の中の
    イベントとして日の目を当てる事が出来ました。

   

  ●アスレチック案・14です。
    『三途の河原の石』は不思議空間の4面で使われる予定だったのですが、上手く行かなかったので没にしました。
   
   

  ●アスレチック案・15です。
    『大観覧車』はリデザインされ、沼大国シャバーンで採用しています。
    また、『ピストン渡り』と『グルリン』は機械都市バキーンの障害物として採用しています。
   
   

  ●アスレチック案・16です。
    『シーソー・ケーキ』も回転機能がオミットされたので没にしました。
    『じゃれ猫』 は使えるステージが用意出来なかったので没にしました。

   
   

  ●アスレチック案・17です。
   
   

  ●ボス部屋に入る前の障害物デザインです。
    『釣り針』はそのまま行きにしましたが、崩れる障害物の方は容量の都合上、踊る石像をスライドさせる形で
    代用しています。
   
   

  ●操作説明・1です。
    ジャンプ制御はハナから想定していました。
    実際のジャンプ軌道は『マジシャンロード』の主人公・エルタのものを改造して使っています。
   
   

  ●操作説明・2です。
    剣を敵の脳天に突き刺してグリグリ回し、ベーゴマの要領で弾き飛ばす攻撃なのですが、
    残酷すぎて可愛いキャラクターと合わないとダメ出しされました(w)。
   
   

  ●操作説明・3です。
    剣を敵の首元に突き刺してグリグリ回し、竹トンボの要領で弾き飛ばす攻撃なのですが、
    やはり残酷すぎて可愛いキャラクターと合わないとダメ出しされました(w)。
   

  ●操作説明・4です。
    こちらはしゃがみ操作です。
   
   

  ●操作説明・5です。
    アイテムの入った実への対処法となります。
   
   

  ●敵案・1です。
    『バスーン』はこの時点ではダルマ帝国側のモンスターでしたが、この後の企画書の段階では、
    惑星ラギの古代サラサット文明の遺産である石奴隷をダルマ一族の配下が発掘して部下にしたという設定にしました。

    『ドリリンII』の説明にある『ポップンホール』とは黒澤修一さんが企画したゲームです。
    『ポップンホール』は『平安京エイリアン』のコンセプトを継いだゲームだったのですが、開発途中で頓挫しました。
    そのゲームには自分がスプライト・デザイナーとして参加していて、そこに登場させたのが『ドリリン』という
    大型ドリルの巻貝モンスターでした。そこから派生したモンスターなので『II』が付けられています。
   

  ●敵案・2です。
    『スラグレイ』はデザインモチーフにしたナメクジ(slug)とエイ(ray)から合成語的に命名しました。

    『ダーク・ハンター』はこの後の企画書の段階で『ダーク・スナイパー』となります。

    『ダルマリン』のデザインも、この後、全体的にリファインされます。
   
   

  ●敵案・3です。
    『プミョプニョ』は呼びにくいので、企画書の段階で『プニプニ』と改名されました。

    『ツイン・ダルマックス』は当初、2体でコスモ・カッターを『南斗双斬拳』のように投げ合う攻撃法を想定していたのですが、
    上手く行かなかったので、それぞれがブーメランのように投げる形となりました。

    不思議空間に音がテーマのステージが作られる事が無かったので、『ダルマ・サンダー』と『ミュージィ』は没としました。
    ダルマ・サンダーはダルマ帝国に加担するカミナリ一族という設定だったのですが、
    この設定を語るには『だるまちゃんとかみなりちゃん』という絵本の説明から始めなければならないので面倒になり、
    『ADKワールド』の没キャラコーナーでは、没理由を『ダルマとカミナリの関連性が無いから』としました(w)。
   
   

  ●敵案・4です。中ボスクラスの2体です。
    『ネロス』の杖の先にはカエルの"はやにえ"が付けられていますが、スプライト・デザイナーの五十嵐さんに拒絶され、
    本番のドットワークスでは宝石になっています。

    『メドラ』の前方無敵のアイディアは、カプコンの『魔界村』のフライングナイトがヒントになっています。
   
   

  ●ラスボス案です。
    『ダルマ帝王』のデザインですが、あまり偉そうに見えなかったので企画書の段階でかなりリファインしました。
   
   

  ●ボス案・1です。
    『血ダルマ隊長』のデザインモチーフはプロレスラーの藤原喜明選手ですが、「可愛くない」との多数意見により、
    全く別デザインに変更する事を余儀なくされました。
    岩に対してヘッドバットをする攻撃方法の理由はここにあります。
    また、血ダルマ隊長の小型分身ですが、当初はブルーと接触すると、アキレス腱固めを掛けるという攻撃を
    想定していましたが、「ドットで表現しきれない」という理由から、泣く泣く没にしました(w)。

    『火ダルマ伯爵』も全く別のデザインに変更し、その際に名前も『火ダルマ将軍』に変更しました。
   
   

  ●ボス案・2です。
    『泥ダルマ大僧正』も、大僧正っぽくないというダメ出しからリデザインしましたね。
    その際、血ダルマ隊長とも火ダルマ将軍とも明らかに違う事をアピールすべく、空飛ぶ箒に跨るようにしました。
    言わずもがな、デザインモチーフはプロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャー選手です。

    白ダルマ大佐はこの後、全体的にインドの民族衣装っぽいデザインにリファインしましたが、
    このキャラクターがボスとして君臨していたエリアがカットされた為、ダルマ帝国エリアで中ボス扱いとして登場させました。

    余談ですが、このページの2体の声はどちらもスプライト・デザイナーの山田英志さんです。
   
   

  ●ボス案・3です。
    『姫ダルマ将軍』は砂漠エリアがカットとなったので、運命を共にしました。
   
   

  ●ボス案・4です。
    『雪ダルマ元帥』です。
    ちなみに、このキャラクターの声は自分が当てています。
   
   

  ●行商稼業の女性、シューイです。
    彼女も企画書の段階で、翅をアゲハにする等、大きくリファインして正規版のデザインまで持って行きましたね。


  ●主人公・ブルーの乗り物であり、一種のバリアでもあるブーミンです。
    彼はレジスタンスの勇士という設定で、アイテムの『王家の笛』を取ると出現する予定でしたが、
    ロムの容量と制作時間の都合でオミットとなってしまいました。

    ちなみに、ブーミンのデザインモチーフはオトシブミという昆虫です。
   
   

  ●画面レイアウトです。
    この時点では、3重スクロールさせて奥行き感を出そうとしましたが、NEO-GEOのラインスプライトが
    想定よりも少なく、2重スクロールに妥協せざるを得ませんでした。
   

  ●企画原案書に付けられた水辺のイメージイラストです。
   
   

  ●企画原案書に付けられた砂漠のイメージイラストです。
   
   

  ●企画原案書に付けられた密林地帯のイメージイラストです。
   
   

  ●企画原案書に付けられた機械都市のイメージイラストです。
   
   

  ●企画原案書に付けられた溶岩地帯のイメージイラストです
   
   

  ●アメコミ風のブルーです。通称『ヘラクレス・ブルー』。
    同じトーンの絵が続くと飽きるのではないかと思い、笑いが必要な頃合いと踏んだページに敢えて挿入しました。
    ここまで来ると『企画』というより『奇策』ですね(w)。
    喋りがあまり得意では無い自分にとって、ラフ絵を早く描くスキルは最大の武器でした。
   
   

  ●ステージ案・1です。
    どんなゲームになるかを説明する為、ステージのサンプルも幾つか用意しました。
   
   

  ●ステージ案・1の続きです。
    1ステージは12画面に設定したのは、カルチャーブレーン時代の研修で学んだノウハウのひとつです。

    ただ、このステージはアスレチックが欲張りすぎていて、難度的に1stステージには向きませんでした。
    これで学んだ事は、最初に作るのは、全体の流れを10としたら、4くらいの位置のステージから作った方が
    難易度を付けて行く上でラクなのではないか、という事でした。

    この経験があったから、現在で言うところの『レベルデザイン』を頭の中で計算出来るというスキルは
    身に付かなかったのではないかと思います。
    もっとも、ゲーム制作以外では何の役にも立ちませんが(w)。
   
   

  ●ステージ案・2です。
    密林地帯のイメージです。
   
   

  ●ステージ案・3です。
    こういった縦スクロールの大きいステージは、2人同時プレイでやるとキャラクターが理不尽に死にまくるので
    (1人でプレイするとただの落下が、2人でやると画面外に落ちた判定となりアウトとなる等)、坂西さんと一緒に
    修正しまくりましたね。
   
   

  ●ステージ案・4です。
    カビの世界をデザインしたステージも予定していました。
    ここではトランポリン的な地面が障害となるステージデザインでした。
   
   

  ●血ダルマ隊長の攻撃方法と、その攻略法の絵コンテです。
    『竹トンボシュート』が水平に飛ぶ軌道になった事で、ボスのステージも大きく変更する事になりました。
   
   

  ●ダルマ帝王の攻撃方法と、その攻略法の絵コンテです。
   
   

  ●各ステージのBGMイメージです。
   
   

  ●主人公・ブルーと、その同志のブーミンのキャラクター計算です。
   
   

  ●ロム容量の振り分けです。
   

    この企画原案は会議で無事通り、次の会議までに企画書を作るという流れになりました。
    その際、下記の修正事項を宿題的に要望されました。

  ■修正要望

    1・剣という武器が他のメーカーと被りやすい、在り来たりのアイテムなので別なものにする事
     → これは、前述の没ゲームとなっていたコロボックルのアクションゲームから、
       『葉っぱのメンコ』を持って来る事で対処しました。

    2・武器にはパワーアップが欲しい
     → これは、3段階のパワーアップ(葉っぱの場合、巻き起こす風の飛距離)を持たせる事で対処しました。

    3・家庭用を狙うなら、RPG的なイベントが欲しい
     → 村人や商人などの会話キャラクターを各ステージに盛り込む事で対処しました。

    4・NEO-GEOハードに唯一残された機能である『縮小』をもっと生かして欲しい
     → Cボタンでスモールブルー(攻撃は出来なくなるが、スピードとジャンプに特化した縮小キャラクター)に
       常時なれる事で対処しました。


    上記の要望を全て満たした企画書ですが、ひとつ問題が発生しました。
     3項の原画を山のように書いたので、コピーを1部取るだけで用紙が1束消えるという末恐ろしい現象が発生、
    やむを得ず、会議ではイベント絵の類ぱ原本を見て頂く形で進めました(w)。
   
   
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